設立の経緯
「日本骨軟部腫瘍病理研究会」
Bone & Soft Tissue Tumor Club of Japan

日本病理学会 理事 日本骨軟部腫瘍病理研究会 幹事 九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理学 教授 恒吉 正澄 (現・九州大学名誉教授、福岡山王病院病理部長・検査部長・国際医療福祉大学大学院教授)

本会は昭和62年(1987年)に「類骨osteoidを考える会」として発足し、牛込新一郎(東京慈恵会医大)、町並陸生(東大)、今村哲夫(帝京大)、恒吉正澄(九大)らが中心となり、第一回は東京慈恵会医大で行われた。“類骨”はその有無が骨肉腫の診断根拠に大いに関与し、硝子質hyalinとの区別が容易でなく、永遠の課題とも言える。そのような命題を抱え、病理組織形態をこよなく愛する人の視点から本会は始まった。難解例あるいは稀有な例を持ち寄って、午前中は検鏡し、午後は検討会を行う。年に二回当番世話人を決めて、全国各地で実施している。名称はBone Tumor Clubとされた。米国ニューヨーク市で、病理医と放射線科医の骨病変の大家(Howard Dorfman、Peter Bulloughら)が骨腫瘍の問題例を検討する限られたメンバーによるclosed meetingをNew York Bone Clubとよんでいるが、我々の会の名称はこれに因んだものである。平成7年2月18日開催の第15回から韓国との合同コンファランスを日本と韓国で2年に1回を交互に行い、第一回は韓国ソウル市で開催された。韓国の参加者の中には米国で数年以上研修した人を含め、診断力、英語力がハイレペルの人も多く、我々にとっても刺激となり、良い効果をもたらしている。平成14年6月からは日本病理学会病理専門医資格更新のための生涯学習基準の単位認定の学術集会として認可され、標記の正式名称の会(幹事:恒吉正澄、常任委員:今村哲夫、野島孝之、庶務会計:小田義直、会計監事:石田剛)になった。本会は年2回全国の各地の当番世話人のもとで行われるが、骨軟部腫瘍について専門家および興味を持つ病理医、整形外科医、放射線科医などが手弁当で参加し、和気あいあいとした雰囲気の中にも激しく熱い討論を興している。現在、高度先進的治療のためにきめ細かな質の高い病理診断がもとめられている。そのためには過去・現在・未来にわたり、HE染色が基盤になり、それに分子生物学的手法を加えて、的確な診断を行い、適切な治療へと導く必要がある。本会は今年(2006年、平成18年)5月の第37回の会(仙台)で二十歳を迎える。この会が成熟して益々発展することを祈り、また確信する。

註:2006年5月発行の「東海病理医会200回記念誌」への寄稿文。「日本骨軟部腫瘍病理研究会」は、その後、「日本骨軟部腫瘍研究会」と改称する。